秋水式火薬ロケット

秋水式火薬ロケット(しゅうすいしきかやくロケット)は、大日本帝国海軍が計画した無線誘導式の地対空ミサイル。実際にはミサイルと言うより無人航空機に近い兵器だった。

概要

1945年昭和20年)、B-29による日本本土空襲への対抗手段として、海軍は航空局に対して特殊局地戦闘機特殊攻撃機)の開発を命じた。航空局はこれを受けて無線操縦を用いる対空誘導弾を開発することとし、村上勇次郎技師を設計主務者として3月に開発を開始した。安定性の計算および実験用小型模型を用いた試験が幾度も行われた後に最終案が決定し、続いて川崎航空機によって実機が製作される予定だったが、制作図面の作成に着手したところで終戦をむかえ計画は中止された。

本機は通常の対空ミサイルとは異なり、炸薬は搭載せずに衝角となった機体前部を用いて、体当たりによって敵機を撃破するものだった。機体の設計はロケット局地戦闘機秋水(J8M)のものをベースとした木金混合構造の後退翼を持つ無尾翼機で、このため「秋水式」と呼ばれている。胴体は砲弾型で、衝角として用いるべく胴体先端と主翼前縁の構造は強固かつ先鋭なものとなっている。推進には固体燃料ロケットを使用。レール式発射台から発進し、ロケットを点火後無線誘導を受けながら上昇、100秒弱で高度9,000 mに到達したところで敵機に体当たり攻撃を行い、無線誘導によって滑空・着陸。帰還後はロケットを交換し再使用するという運用が予定されていた。

なお、本機は無人機ではあるが、操縦席が描かれた有人型と思しきラフスケッチも残されている。

諸元(計画値)

  • 全長:2.80 m
  • 全幅:4.00 m
  • 翼面積:5.0 m2
  • 自重:200 kg
  • 最大重量:800 kg
  • エンジン:固体燃料ロケット(推力120 kg) × 4
  • 戦闘高度:9,000 m
  • 武装:衝角 × 1

参考文献

  • 石黒竜介、タデウシュ・ヤヌシェヴスキ『日本陸海軍の特殊攻撃機と飛行爆弾』大日本絵画、2011年、230頁。ISBN 978-4-499-23048-3。 
  • 粟野誠一ほか編 『日本航空学術史(1910-1945)』日本航空学術史編集委員会、1990年、25頁。全国書誌番号:90036751。

関連項目

艦上戦闘機 (A)
艦上攻撃機 (B)
艦上偵察機 (C)
艦上爆撃機 (D)
  • DXD
  • DXHe
  • 惑星
水上偵察機 (E)
観測機 (F)
陸上攻撃機 (G)
  • LB-2
  • TB
  • He 119
飛行艇 (H)
陸上戦闘機 (J)
練習機 (K)
輸送機 (L)
  • H11K-L
特殊攻撃機 (M)
特殊機 (MX)
水上戦闘機 (N)
  • N1K
陸上爆撃機 (P)
  • P1Y
  • Ju 88
  • 天河
哨戒機 (Q)
  • Q1W
  • Q2M
  • Q3W
陸上偵察機 (R)
  • R1Y
  • R2Y
夜間戦闘機 (S)
  • J1N-S
  • P1Y2-S
飛行船(航空船)
  • SS式
  • 一号型改
  • 一五式
  • 三式
  • アストラ・トウレ
  • N3号
気球
  • スペンサー式
  • ゼーム式
  • A.P型
関連項目
×は退役済・は開発中止・{ }は開発中
対空
空対空
地対空
艦対空
  • {新艦対空誘導弾}
対艦2
空対艦
地対艦
艦対艦
潜対艦
  • {潜水艦発射型誘導弾}
対戦車
対潜
対地
旧軍
空対艦
地対空
  • 奮龍
  • 秋水式火薬ロケット
1 OH-1   2 対艦誘導弾