拡散数

拡散数(かくさんすう、: diffusion number)とは、陽解法を用いた拡散方程式数値解析に際して、その数値的安定性を議論する上で重要な無次元数のひとつ。拡散数d は次式で定義される。

d = k Δ t ( Δ x ) 2 {\displaystyle d=k{\dfrac {\Delta t}{(\Delta x)^{2}}}}

ここで

  • k拡散係数
  • Δt :解析における時間間隔
  • Δx :空間方向の間隔

である。

導出

1次元の拡散方程式

u t = k 2 u x 2 {\displaystyle {\dfrac {\partial {u}}{\partial t}}=k{\dfrac {\partial ^{2}{u}}{\partial {x}^{2}}}}

ここで

  • t :時間
  • x :空間座標

を考える。差分法を用いて拡散方程式を離散化すると以下のようになる。

u i n + 1 u i n Δ t = k u i + 1 n 2 u i n + u i 1 n ( Δ x ) 2 {\displaystyle {\dfrac {u_{i}^{n+1}-u_{i}^{n}}{\Delta t}}=k{\dfrac {u_{i+1}^{n}-2u_{i}^{n}+u_{i-1}^{n}}{(\Delta x)^{2}}}}

この式を拡散数d を用いて書き直すと、時間ステップn +1 における物理量uin +1

u i n + 1 = u i n + d ( u i + 1 n 2 u i n + u i 1 n ) {\displaystyle u_{i}^{n+1}=u_{i}^{n}+d(u_{i+1}^{n}-2u_{i}^{n}+u_{i-1}^{n})}

と表すことができる。

拡散数による安定性の評価

拡散方程式を陽解法、特に差分法を用いて計算する場合、拡散数の大きさにより解析の数値的安定性フォン・ノイマンの安定性解析により評価することができる。解析を安定に進めるためには

d 1 2 {\displaystyle d\leq {\frac {1}{2}}}

である必要がある。この式は以下のように書き換えられる。

Δ t 1 2 ( Δ x ) 2 k {\displaystyle \Delta t\leq {\frac {1}{2}}{\dfrac {(\Delta x)^{2}}{k}}}

つまり時間間隔Δt をある値より小さくしなければ安定に解析ができない。解析を精度よく行うために空間解像度Δx を小さくする場合、Δt はその2乗で小さくしなければならず、この条件は非常に厳しいものとなる。

参考文献

  • 竹内則雄、樫山和男、寺田賢二郎『計算力学』森北出版、2003年9月。ISBN 4-627-91801-1。 
  • 藤井孝蔵『流体力学の数値計算法』東京大学出版会、1994年4月。ISBN 9784130628020。 

関連項目