ボラー連邦

ボラー連邦(ボラーれんぽう)は、アニメ『宇宙戦艦ヤマトIII』『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』に登場する架空の恒星間国家。

基本設定

銀河系の一翼、オリオン腕(太陽系)の反対側に広がる広大な星間国家。銀河系中心部に版図を有する新興国家ガルマン・ガミラス帝国との間で銀河系大戦を繰り広げており、『ヤマトIII』での地球はそれに巻き込まれる形で関わることになる。

元々は銀河系の半分以上の領域を支配する恒星間国家であり、多数の植民地惑星や流刑惑星を持ち、オリオン腕方面ではバース星に総督ボローズを派遣して支配、流刑地にしていた。しかし23世紀初頭、銀河系中心部で元ガミラス帝国総統デスラーが主導したガルマン人の解放戦争で、ガルマン・ガミラス帝国が建国されたことで、ボラー連邦はこの領域の支配権を失ったため、全体の支配領域は銀河系の30〜40%ほどになった。

劇中では作品後半クールの敵として活躍し、主にヤマトの移住可能惑星探査の旅を妨害してくる。ボラー連邦側としてはあくまでもガルマン・ガミラス帝国との戦争が主軸であり、地球に対してはガルマン・ガミラス帝国の味方だからという理由で攻撃しているに過ぎず、ヤマトシリーズの敵性国家としては例外的に地球への直接的かつ大々的な侵略は行っていない[注 1]

作中において登場するボラー連邦の最上位者は、首相のベムラーゼである。「首相」という地位は現実の国家では元首の肩書きではなく[注 2]、作中世界においても地球連邦の首相は大統領よりも下位の存在である(『宇宙戦艦ヤマト2』)が、ボラー連邦に関しては首相より上位の存在の有無についての言及はない。

モチーフとなっているのはソビエト連邦[1]。初期案でのイメージは、「原始的野蛮がすっぽりと23世紀の皮フをかぶっているよう」(原文ママ)となっていた[1]。人名はロシア人風、連邦のネーミング、酷寒の本星、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を想起させるような酷寒な流刑惑星などの設定となっており、劇中で使用された宮川泰作曲によるボラー連邦のテーマ曲(BGM)にも、ロシア民謡(サウンドトラックのライナーノーツに拠れば「スラブ民謡」)風の曲調が採用されている。

なお、ガルマン・ガミラス帝国では一応宗教らしきものがあるらしい(デスラーが自らを神に擬している)が、ボラー連邦の宗教は不明である。劇中でデスラーはベムラーゼへの挑発として、葬儀をあげるために宗派を教えろと言っているが、ベムラーゼはそれについて回答していない。ただし、第13話にてベムラーゼが「宇宙の神はわし一人で十分」と発言しており、デスラー同様自らを神格化していることが窺える。また、かつて強大な科学力をもって銀河系を支配した伝説的な恒星間国家シャルバートの存在に関しても警戒しており、その信者を弾圧しているほか、王女であるルダを捕らえて流刑するという行為をしている。

本星

地球とは銀河系中心を挟んで正反対に位置する。厚い雲に覆われた酷寒の惑星。都市はドーム状の建物と角ばったビルから成っており、建物には氷が張り付き、一部は完全に氷に覆われている。首相であるベムラーゼはベムラーゼパレスという宮殿にいる[2]出渕裕が描いたデザインラフ稿では、「首都ラスコー」の名が見られる[3](ただし、このデザインは実際の映像を見る限り採用はされていない)。

なお、本星を含めたボラーの勢力圏内の宇宙空間は赤紫色となっており、緑色になっているガルマン・ガミラスの星域と差別化されている[4]

また、ヤマトシリーズにおいては例外的に、本星が戦場となったことがない。

民族

肌の色は真っ白で、大半の人物は紅瞳を持つ。ベムラーゼ、ボローズ、レバルスなどの初期設定のネーミング(ベムーリン、ボロゾフ、バルスキー)はロシア人風である。

なお女性キャラクターはまったく登場せず、ボラー人に女性が存在するかどうかさえも不明である。

初期案では、「雪男のように全身に白い長毛あり。巨漢で手強い」(原文ママ)というイメージだった[1]

属国であるバースは民族が異なるため、緑色の肌をしている。

軍事

赤軍風の、物量に物を言わせた力押しの正面攻撃を基本戦術とする。

兵器

宇宙艦艇の塗装は基本的に紫色で、旗艦のみ赤色である。戦艦の形状は、紡錘状とイモムシ状の中間の形態で水色のA、B 2タイプがある。装備されている光線砲には、ボラーチウム100という放射線が含まれており、光弾色は黄緑。砲は平時は艦内に格納されており、戦艦Aタイプなどの板状の無砲身のものと、戦艦Bタイプなどの有砲身のものとがある。固定式の大口径砲は特に「ボラー砲」と呼称されている[注 3]

格納式砲塔は使用する時にのみ外部へ展開するが、基本的に左右に旋回できないため[注 4]、上下方向以外へ発射角度を変えるには艦体ごと傾ける必要がある(そのため正確には「砲塔」と言うより「砲郭」である)。

本国艦隊には、高級幹部専用旗艦や惑星破壊ミサイルを搭載する大型戦艦、ミサイル「スペース・ロック」を装備するデストロイヤー艦などの新鋭艦が配備されている一方、植民星に配備されている艦船の規模は本国艦隊より劣っているような描写がある[注 5]。なお、演出上の都合もあり、個艦性能の描写に関しては各話ごとにばらつきが見られる(これはボラー艦に限った話でもない)。

メカデザインは主にサブマリンが担当しており、直線を好む板橋克己がデザインしたガルマン・ガミラスのメカとは対照的な曲線を主体としたメカが多い[6]。しかし、ガルマン・ガミラスのメカデザインが一段落して以降ボラー側のメカも板橋が担当したため、シリーズ後半から登場したメカは直線主体のものが多くなっている[6]

軍人

連邦軍の標準軍服は灰色を基調としており、両肩を膨らませたパフスリーブが特徴となっている。兵士と士官は上下つなぎでブーツと長手袋を着用し、上級将校は短手袋になり緋のマントが付く。襟の色は統一されていない様で、バース星警備隊長のレバルスとハーキンス中将が非常に酷似した赤地、黄一本線付、黄縁V字型詰襟を着用している。また、バース星艦隊などといった保護国の軍隊は独自の制服を着用している。

劇中での描写

宇宙戦艦ヤマトIII

序盤は属国であるバース軍のみが登場し、ボラー連邦本体はまったく登場しなかったが、第1話の時点で「バース星艦隊(ボラー連邦系)」というテロップが入っている。1クール目はガルマン・ガミラス帝国がメインの敵として登場しており、ボラー軍はそれに対するやられ役として描かれていた。

バース星の艦隊がガルマン・ガミラス帝国東部方面軍第18機甲師団艦隊と交戦するも敗北を重ねることになる。最終的に太陽系に流れ着いた旗艦ラジェンドラ号はヤマトと邂逅。人道的観点から支援を受け、直後に現れたガルマン・ガミラス艦隊相手に共に戦う。

このように、序盤のボラーは味方勢力であるかのような描写となっている。

しかし、第12話にてヤマトがバース星に立ち寄った際に、地球側にもボラーの存在が知られることになる。ラジェンドラ号の一件もあり、当初は両者とも友好的な関係を築こうとしていたが、反乱を起こしたシャルバート信者の処遇に関しての対立と、ベムラーゼが地球を属国として扱ったことに古代進が反発したことにより、両者の関係は悪化し、敵対することになる。第15〜18話でガルマン・ガミラス帝国とヤマトが一応の和解を果たしたため、この時期を境にヤマトから見た敵味方が逆転する格好となった。

第22話において、惑星ファンタムに流刑していたシャルバート星の王女ルダがヤマトに乗り込んだと知ると、その身柄を確保するために艦隊を派遣。しかし出撃したハーキンス艦隊・バルコム艦隊のいずれも壊滅し、最終的にゴルサコフ艦隊がヤマトを追尾して辿り着いたシャルバート星の占領を企むも、デスラー艦隊によって防がれる。

最終話ではベムラーゼ自ら機動要塞を以て出陣し、デスラーを誘い出すという目論見の下、太陽系に置いてヤマトを襲撃する。デスラーを誘き出すこと自体には成功し、その艦隊をほぼ壊滅へと追いやるも、ヤマト艦載機(揚羽武)が要塞に特攻し、その隙に発射されたデスラー艦のハイパーデスラー砲によってベムラーゼもろとも要塞は葬られた。

直後にヤマトが暴走する太陽の制御を成功させて地球を救った物語が締めくくられるため、ガルマン・ガミラスとボラーの銀河系大戦の顛末は描かれずに終了する。

宇宙戦艦ヤマト 完結編

銀河系全土に発生した異変(異次元に存在する別の銀河系が、突如次元の境界を破って出現、我々の銀河系と衝突。原因は不明)によってボラー連邦も壊滅的打撃を受けたとのナレーションがある。上記の太陽系会戦でベムラーゼ首相は死亡したものの、国家としては存続していたことがうかがえる。

なお、『完結編』本編、そしてその続編にあたる『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』にはまったく登場しない。

宇宙戦艦ヤマト 復活篇 第0部 / 宇宙戦艦ヤマト 黎明篇

『復活篇』の5年前を描いた小説『アクエリアス・アルゴリズム 宇宙戦艦ヤマト復活篇 第0部』(後に『宇宙戦艦ヤマト 黎明篇 アクエリアス・アルゴリズム』として改題・改稿して書籍化)では、『完結編』後の動向が若干描かれている。

銀河交差の影響で戦争状態ではなくなったため、ガルマン・ガミラス帝国と休戦協定を締結[7]。ガルマン・ガミラスはその後大マゼラン星雲へ退避したが、ボラーの動向は不明。

ただし、劇中での事件の後日談にて、ボラーの高官がガルマン・ガミラスの高官とともに地球の式典に出席していることから、西暦2215年時点でも国家として存続していることが分かる。

主要人物

保護国バース星

所有メカ

艦艇

戦艦

空母

その他

宇宙要塞

航空機・宇宙艇

陸上兵器・地上部隊

その他兵器・関連技術

リメイクアニメ

宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち』以降の要素を盛り込んだリメイクアニメ『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』に登場[8]

「銀河系に版図を有する強大な星間国家」「ガルマン星を支配していたが、デスラー率いるガミラス軍によって放逐された」という基本設定は旧作と同様だが、それ以外に関しては現時点では描かれていないため不明。リメイクでの新設定として、「ボラー連邦永久管理機構」という組織が存在しており、ガルマン星の統治はこの組織が行っていることが描写されている。

『2205』前章時点で登場している人物は原典と異なり緑色の肌をしているが、彼らが原作でのボラー人に相当するのか、バース人のような別民族なのかは不明。

劇中では第1話に登場。ガルマン星を半世紀にわたって支配しており、土地はおろか現住民であるガルマン人すら「資源」として扱っていた[9]。ガルマン人には少しでも抵抗すれば即座に毒殺できる機能を持った首輪を着用させ、ガルマン星の文化・宗教は徹底的に破壊するなど残酷な所業を繰り返しており、その結果ガルマン人の総人口は劇中時点で5000万人未満にまで減っていた[9]。やがてガルマン星を発見したアベルト・デスラーから交渉を持ちかけられ、ボラーの発展への貢献を見返りに星の譲渡を求められるが、ボラー側はガミラスもガルマンと同じ立場に貶めようとしたため、交渉決裂を見たガミラス側は武力をもってガルマン星を制圧し、ボラーは支配権を失うこととなる。しかし、ボラーがこのまま黙って引き下がるはずがないとガミラスは考えており、両国間には緊張状態が続いている。

『3199』において、イスカンダル事変後の西暦2207年に至って、ガミラスを牽制しつつ、勢力圏拡大のために地球の勢力圏に干渉しつつある。

また、『宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』で描かれた前史において、第一次内惑星戦争時に火星側が開発した戦闘艦が過去に火星へ漂着した異星文明の宇宙船を技術的ルーツにしているという設定が語られる(「証拠が抹消されているため真偽不明」という体裁を取っているが)。この異星船がボラー連邦の戦闘艦であり[10][注 6]、火星艦およびその設計コンセプトを真似た地球艦がボラー連邦の艦をルーツとしていることが示唆されている。

主要人物(リメイクアニメ)

所有メカ(リメイクアニメ)

詳細な設定は『2205』時点では描かれておらず、戦闘艦も「現段階では名称不明」と解説されている[12]

下記の戦闘艦3種のほか、連装砲を備えた戦車旧作におけるミサイル戦闘車、アサルトライフル風の小銃などが登場している。

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 最終話で太陽系に侵攻したベムラーゼも、「我々はヤマトなどどうでも良かったのだ。貴方(デスラー)を誘き出すのが目的だった。」と述べている。
  2. ^ 首相は行政の長であり、国家の運営形態によって実質的な地位が全く異なる。基本的には(実権をどの程度持っているかどうかは別として)君主や大統領が元首として首相の上に置かれていることが多い。詳細は「首相」と「元首」を参照。
  3. ^ ハーキンス艦とゴルサコフ艦の設定画に記載されている名称[5]。劇中では呼称されず。バンダイifシリーズ『宇宙戦艦ヤマト』では、ボラー砲はガルマン帝国の高圧直撃砲と同種の決戦兵器扱い。
  4. ^ スカラゲック海峡戦に見られるように、A戦艦の艦首砲は上下左右、ある程度は射角が取れる模様。
  5. ^ これは序盤の段階ではガルマン・ガミラス帝国がメインの敵として描かれ、ボラー連邦(バース星)がその相手役(有り体に言うとかませ犬)だったという物語の都合もある。
  6. ^ 絵コンテには「ボラーの船」と記述されている[11]

出典

  1. ^ a b c 「ヤマトIII構成案 〈参考資料〉ヤマトIII・星間国家系統図」『ロマンアルバム・デラックス43 宇宙戦艦ヤマトIII』p. 112。
  2. ^ 「美術設定編」『ロマンアルバム・デラックス43 宇宙戦艦ヤマトIII』p. 84。
  3. ^ 「ヤマトIII ラフ・没設定集 惑星アイデア設定」『ロマンアルバムエクセレント54 宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL2』p. 107。
  4. ^ 『宇宙戦艦ヤマトIII DVDメモリアルボックス 保完ファイル』p. 29。
  5. ^ 『ロマンアルバム・デラックス43 宇宙戦艦ヤマトIII』p. 74。
  6. ^ a b 『宇宙戦艦ヤマトIII DVDメモリアルボックス 保完ファイル』p. 28。
  7. ^ “アクエリアス・アルゴリズム第1話【一部無料公開】 / 第1話 アクエリアス―氷球 2”. YAMATO CREW. 株式会社ヤマトクルー (2020年2月7日). 2020年2月29日閲覧。
  8. ^ “完全新作で描くシリーズ最新作「『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』前章 –TAKE OFF-」劇場上映・Blu-ray特別限定版・デジタルセル 10月8日(金)同時スタート決定!!”. V-STORAGE. バンダイナムコアーツ (2021年6月11日). 2021年6月13日閲覧。
  9. ^ a b 『「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち 前章 -TAKE OFF-」劇場パンフレット』宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会(発行)、バンダイナムコアーツ(販売)、2021年10月、p. 05。
  10. ^ 「『2205』メカニカル・デザイン(デザリアム/ボラー連邦) 明貴美加スペシャルインタビュー」『ヤマトマガジン Vol.13』ヤマトクルー、2021年11月、pp. 18-19。
  11. ^ 宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会公式Twitter 2021年1月5日の発言、2021年7月30日閲覧。 ※2021年7月現在は宇宙戦艦ヤマト2205製作委員会。
  12. ^ “ボラー戦艦・空母”. 宇宙戦艦ヤマト2205公式サイト. 2022年1月29日閲覧。

参考文献

  • 『ロマンアルバム・デラックス43 宇宙戦艦ヤマトIII』徳間書店、1981年6月。雑誌 61577-57。
  • 『ロマンアルバムエクセレント54 宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL2』徳間書店、1983年1月。雑誌 61577-71。
  • 『宇宙戦艦ヤマトIIIDVDメモリアルボックス 保完ファイル』バンダイビジュアル、2001年5月25日。
アニメーション
原典シリーズ
テレビアニメ
劇場版
リメイクシリーズ
(『2199』シリーズ)
テレビアニメ
ODS
劇場版
その他
実写映画
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