フラボノイド

フラボノイドの基礎骨格となるフラバンの構造式

フラボノイド: flavonoid)とは、天然に存在する有機化合物群で、クマル酸CoAマロニルCoAが重合してできるカルコンから派生する植物二次代謝物の総称。いわゆるポリフェノールと呼ばれる、より大きな化合物グループの代表例。その中にアントシアニンカテキンフラバンを含む広い概念で、付着する糖のバリエーションを考慮すると7,000以上の構造が知られている。フラボンアントシアニンは天然色素として用いられる。また花の色素として知られるアントシアニン紅葉(赤色)の原因でもある。血管透過性抑制作用が見出されたことからビタミンとして提唱され、フラボノイドのうちクエルセチンヘスペリジンなどをあわせてビタミンPと呼ばれたことがあった。しかし、欠乏症がないため、これらはビタミンではないことが明らかにされた。日本ビタミン学会はフラボノイドをビタミン様物質として規定している。

シキミ酸経路でできるフェニルアラニンの脱アミノで生成するクマル酸補酵素Aと結合してクマル酸CoA(4-クマロイルCoA)ができる。次に酢酸マロン酸経路のマロニルCoA、3分子がそれと反応してカルコンが生成する。カルコンからフラバノンを経てジヒドロフラボノールが生成し、ジヒドロフラボノールからフラボノール、アントシアニ(ジ)ンやプロアントシアニジン(タンニン)誘導される。

生合成

フラバノンの生合成

フラボノイドはフラボノイドの一種であるフラバノンが様々な修飾をうけることで生合成される。

代表的なフラバノンであるナリンゲニン (naringenin) はアミノ酸であるフェニルアラニンから以下の経路で生合成される。

まず、フェニルアラニンがフェニルアラニンアンモニアリアーゼ (PAL) により桂皮酸へと変換される。次にシナメイト-4-ヒドロキシラーゼ (C4H) によりp-クマル酸 (p-coumaric acid) へと酸化される。p-クマル酸は4-クマレートCoAリガーゼ (4CL) によりp-クマロイルCoAへと活性化される。このp-クマロイルCoAがポリケチド合成酵素であるカルコン合成酵素 (CHS) の作用により3分子のマロニルCoAと縮合することでナリンゲニンカルコン (naringenin chalcone) へと変換される。このナリンゲニンカルコンがカルコンイソメラーゼ (CHI) により立体特異的に異性化されフラバノンへと変換される。

分類

フラボノイドを豊富に含んでいるとされる食品

健康影響

フラボノイドは抗酸化作用を有している。女性ではフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いグループで、脳卒中の発症リスクが低かった[1]。また、フラボノイドの豊富な果物、特に柑橘類の摂取量が多いグループでは、虚血性心疾患の発症リスクが低かった[2]

出典

  1. ^ 独立行政法人国立がん研究センター、多目的コホート研究、現在までの成果、フラボノイドの豊富な果物の摂取と脳卒中発症リスクとの関連
  2. ^ 独立行政法人国立がん研究センター、多目的コホート研究、現在までの成果、フラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、フラボノイドに関連するカテゴリがあります。
  • フラボノイド類 - (オレゴン州大学・ライナス・ポーリング研究所)
  • フラボノイドと肌の健康 - 同
  • コウリャン色素(横浜市衛生研究所 - 食品衛生情報)
  • メタボロミクスJP フラボノイド
フラボノイド
フラボノイド
アントキサンチン
フラボン
イソフラボン
フラボノール
ネオフラボノイド(英語版)
  • ダルベルギクロメン(英語版)
フラバン
フラバン
  • ルテオリフラバン
フラバン-3-オール
(フラバノール)
フラバン-4-オール
(フラバノール)
  • アピフォロール(英語版)
  • ルテオフォロール(英語版)
フラバン-3,4-ジオール
ロイコアントシアニジン
  • ロイコシアニジン(英語版)
  • ロイコデルフィニジン(英語版)
フラバノン
フラバノノール
アントシアニジン
3-デオキシアントシアニジン(英語版)
3-ヒドロキシアントシアニジン(英語版)
オーロン
  • アウレウシジン(英語版)
  • レプトシジン(英語版)
カルコン
カルコン
ジヒドロカルコン
その他
一覧
関連項目
カテゴリ カテゴリ
典拠管理データベース: 国立図書館 ウィキデータを編集
  • スペイン
  • フランス
  • BnF data
  • ドイツ
  • イスラエル
  • アメリカ
  • ラトビア
  • 日本
  • チェコ


  • 表示
  • 編集