スリュムヘイム

スリュムヘイムトリルハイム[1]とも。古ノルド語: Þrymheimr)とは、北欧神話に登場する巨人スィアチの館である。その名前は「轟く家」("crash-home")[2]、「雷の鳴る家」("Thunder Home")[3]、「騒がしい家」("noisy-home")[4]を意味する。

スリュムヘイムはヨトゥンヘイムの山合いにあった[5]。スィアチが雷神トールに倒された後は、娘のスカジが一人で暮らしていたようである。『古エッダ』の『グリームニルの言葉』において神々の住居が列挙されるが、このスリュムヘイムは6番目に挙げられ、そこでスカジは「神々の麗しい花嫁」と呼ばれる[6]

スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』第23章によれば、スカジは海神ニョルズと結婚したが、彼女はスリュムヘイムに住みたいと言った。しかしニョルズは自分の館ノーアトゥーンで暮らしたいと言った。そこで2人は7日ずつ交互に互いの館で暮らすことにした。しかしノーアトゥーンは港にあったため、スカジは海鳥の声がうるさくて眠れなかった。ニョルズはスリュムヘイムで暮らす間、狼の遠吠えが我慢ならなかった。2人は離婚し、スカジはスリュムヘイムでまた暮らすようになった[7]

一説には、弓の神ウルとスカジが出会って意気投合し、スリュムヘイムで同居するようになったとも言われている[8]

脚注

W.G. Collingwoodによって描かれた、スカジとニョルズのスリュムヘイムでの生活。(1908年)
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  1. ^ 『北欧の神話伝説(II)』にみられる表記。
  2. ^ Orchard (1997:165).
  3. ^ Byock (2006:34).
  4. ^ Simek (2007:330).
  5. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』244頁。
  6. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』53頁。
  7. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』244-245頁。
  8. ^ 『北欧の神話伝説(II)』8-12頁。ただし原典の説明はなし。

関連項目

参考文献

  • V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。
  • 松村武雄編著『北欧の神話伝説(II)』名著普及会〈世界神話伝説大系 30 〉、1980年改訂版、ISBN 978-4-89551-280-0。
  • Byock, Jesse (Trans.) (2006). The Prose Edda. Penguin Classics. ISBN 978-0-14-044755-2.
  • Orchard, Andy (1997). Dictionary of Norse Myth and Legend. Cassell. ISBN 978-0-304-34520-5.
  • Simek, Rudolf (2007) translated by Angela Hall. Dictionary of Northern Mythology. D.S. Brewer. ISBN 978-0-8599-1513-7.
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ミョルニルを象ったペンダント スウェーデンのスコーネ、1877年
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