エチオピアの行政区画

エチオピア


エチオピアの政治

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エチオピアの行政区画(エチオピアのぎょうせいくかく)エチオピアに存在する13の州と1つの自治区の事を指す。第一級行政区画は州・自治区である。第二級行政区画はである。第三級行政区画は郡である。

州・自治区

エチオピアの州と自治区

2021年11月時点で、エチオピアは12つのと2つの自治区からなる。現体制は1994年12月に承認され、1995年8月21日に施行された1995年憲法(英語版)によって成立した。

州は公式に地域州英語: Regional stateアムハラ語: ክልል kilil、複数形: ክልሎች kililochオロモ語: Naannoo、複数形: Naannolee) と呼ばれており、当時の首相メレス・ゼナウィが提唱した民族連邦主義(英語版)に基づき民族ごとに構成されているのが特徴である。各州は州議会(英語: Regional council、州評議会)が選出した州知事(President、大統領とも)によって統治される。なおアムハラ語の ክልል には「居留地」「保護区」という意味もあるため[1]、かつて南アフリカアパルトヘイト政策の一環として先住民族を強制的に再編成し「自治区・独立国」としたバントゥースタンを想起させるとして、反政権勢力から批判がなされている[2]

自治区は民族要素を排除しその地域を政治的に中立にするために設けられている。これは首都や論争のある地域などに適用されており、前者はアディスアベバで後者はディレ・ダワが当てはまる。ディレ・ダワは1993年より始まったソマリ州オロミア州の領土問題によるもので、最初は連邦直轄領とされていた[3]。2004年に連邦政府から自治権が与えられ自治区となった[3]。規模としては1つの都市に近いことから、特別市といった表現もなされる[4](ただしハラリ州は自治区よりも規模が小さい)。

憲法制定後の変更は2004年にディレ・ダワが連邦直轄領から自治区に変更された程度だったが、2018年に首相に就任したアビィ・アハメドは民族の調和と国内の統合を主張し行政区画の再編に乗り出した。多数の民族が居住していた南部諸民族州は、2020年6月にシダマ州[5][6]、2021年11月に南西エチオピア諸民族州がそれぞれ分立し[7]、残る地域も2023年8月に南エチオピア州中部エチオピア州に分割されたことで消滅した[8]

# 州名
アムハラ語
人口[9]
(2023年)
面積[10]
(km2)
人口密度
(/km2)
主な民族 州都
アムハラ語
1 アディスアベバの旗 アディスアベバ自治区
አዲስ አበባ
3,945,000 526.99 7,485.9 アムハラ人56%、オロモ人19%
グラゲ人16%、ティグリニャ人5%
---
2 アファール州の旗 アファール州
አፋር ክልል
2,076,000 72,052.78 28.8 アファール人90%、アムハラ人5% セメラ
ሰመራ
3 アムハラ州の旗 アムハラ州
አማራ ክልል
23,216,000 154,708.96 150.1 アムハラ人91%、アガウ人3%、オロモ人2% バハルダール
ባህር ዳር
4 ベニシャングル・グムズ州の旗 ベニシャングル・グムズ州
ቤንሻንጉል ጉሙዝ ክልል
1,251,000 50,698.68 24.7 ベルタ人25%、アムハラ人21%、グムズ人21%
オロモ人13%、シナシャ人7%
アソサ
አሶሳ
5 中部エチオピア州の旗 中部エチオピア州
የማዕከላዊ ኢትዮጵያ ክልል
6,271,761 15,098.97 415.4 ハディア人(英語版)27%、グラゲ人25%、
シルテ人(英語版)18%、カンバタ族13%
ウォルキテ(英語版)
ወልቂጤ
6 ディレ・ダワの旗 ディレ・ダワ自治区
ድሬ ዳዋ
551,000 1,558.61 353.5 オロモ人48%、アムハラ人27%、ソマリ人13% ---
7 ガンベラ州の旗 ガンベラ州
ጋምቤላ ክልል
525,000 29,782.82 17.6 ヌエル人46%、アニュワ人21%、アムハラ人8%
カフィチョ人5%、オロモ人4%、マジャン人4%
ガンベラ
ጋምቤላ
8 ハラリ州の旗 ハラリ州
ሓረሪ ክልል
283,000 333.94 847.5 オロモ人56%、アムハラ人22%、ハラリ人8%
グラゲ人4%、ソマリ人3%
ハラール
ሓረር
9 オロミア州の旗 オロミア州
ኦሮምያ ክልል
40,884,000 298,164.29 137.1 オロモ人87%、アムハラ人7% アダマ
አዳማ
10 シダマ州の旗 シダマ州
ሲዳማ ክልል
5,301,868 6,695.38 791.9 シダマ人(英語版)90% アワッサ
አዋሳ
11 ソマリ州の旗 ソマリ州
ሶማሊ ክልል
6,657,000 327,068.00 20.4 ソマリ人96% ジジガ
ጅጅጋ
12 南エチオピア州の旗 南エチオピア州
የደቡብ ኢትዮጵያ ክልል
7,594,741 44,653.88 170.1 ワライタ人29%、ガモ人20%、ゲデオ人14%、
ゴファ人(英語版)7%、アーリ人(英語版)5%、コンソ人(英語版)4%
13 南西エチオピア諸民族州の旗 南西エチオピア諸民族州
የደቡብ ምዕራብ ኢትዮጵያ ህዝቦች ክልል
3,374,706 39,061.41 86.4 カフィチョ人(英語版)35%、ダウロ人(英語版)21%
ベンチ人(英語版)15%、メカン人(英語版)6%、アムハラ人6%
ボンガ(英語版)
ቦንጋ
14 ティグレ州の旗 ティグレ州
ትግራይ ክልል
5,838,000 85,366.53 68.4 ティグレ人96% メックエル
መቐለ
備考
  • 国勢調査で特別な扱いを受けている郡(Special Census Wereda)の人口はどの行政区画にも含んでいない。特別国勢調査郡の合計は142,000人。
  • 以下はエチオピアが領有権を主張する係争地および国境未定地域である。そのため関連する州の面積が変動する場合がある。
    • アルファシャガ・トライアングル(2020-21年スーダン・エチオピア国境紛争)- エチオピアが領有権を主張。隣接するのはアムハラ州、ティグレ州。
    • イレミ・トライアングル - ケニアおよび南スーダンに跨った地域。隣接するのは南部諸民族州(または南西エチオピア諸民族州)。
    • ソマリア国境(オガデン) - ソマリ州に含まれる地域で、ソマリアが領有権を主張していた。ソマリア内戦以降は目立った動きはないものの、地図では国境未確定として描かれることがある。
    • かつてはエリトリア国境(バドメ、Bureなど)も領有権問題があったものの、2018年の平和条約で解決された。

下位行政区画

エチオピアのゾーン

それぞれの州はいくつかの地方(ゾーン)に分かれる。

下位行政区分として、以下のような訳語が用いられる。

  • 県(Zone)、郡(Woreda)、村(Kebele)[11]
  • 県(Zone)、郡(Woreda)、基礎自治体(Kebele)
  • 地方(Zone)、県(Woreda)、村(Kebele)


下位行政区画の記事

行政区画の変遷

1995年以前のエチオピアの州

1993年までのエチオピアの州。
1987年1991年の行政区画

1995年以前、エチオピアは13の州に、エリトリアの独立以前は14州に分かれていた。この分け方は現在では行政区画ではないが、現在でも位置を表すのに用いられることがある。

  1. アルシ州(英語版)
  2. バレ州(英語版)
  3. ベゲムデル州(英語版)
  4. ガム・ゴファ州(英語版)
  5. ゴジャム州(英語版)
  6. ハラルゲ州(英語版)
  7. イルバボル州(英語版)
  8. カッファ州(英語版)
  9. ショア州(英語版)
  10. シダモ州(英語版)
  11. ティグレ州
  12. ウェレガ州(英語版)
  13. ウォロ州(英語版)
  14. エリトリア州1993年独立

1942年以前のエチオピアの州

さらに1942年以前に使われた歴史的な州の名称についても、位置を示す際に用いられることがある。

1935年の行政区画
  1. アガメ州(英語版)
  2. アガウメデル州(英語版)
  3. アムハラ州
  4. ダワロ州(英語版)
  5. デムビヤ州(英語版)
  6. エンデルタ州(英語版)
  7. ファタガル州(英語版)
  8. ハディヤ州(英語版)
  9. イファト州(英語版)
  10. ラスタ州(英語版)
  11. メンス州(英語版)
  12. クァラ州(英語版)
  13. セミエン州(英語版)
  14. テンビアン州(英語版)
  15. ツェレムト州(英語版)
  16. ツェゲデ州(英語版)
  17. ワグ州(英語版)
  18. ウェゲラ州(英語版)

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ “AmharicDictionary.com”. 2021年11月27日閲覧。
  2. ^ "They knew I would rather die than give up the fight" Interview with Taye Woldesmiate (Ethiopia) at the Wayback Machine (archived 2008-07-25)
  3. ^ a b Asnake Kefale (2014). “Ethnic decentralization and the challenges of inclusive governance in multiethnic cities: The case of Dire Dawa, Ethiopia”. Regional & Federal Studies 24 (5): 589–605. doi:10.1080/13597566.2014.971772. 
  4. ^ “エチオピアで選挙実施、暫定結果発表後の混乱に警戒を”. 日本貿易振興機構 (2021年6月22日). 2021年11月27日閲覧。
  5. ^ “Council ratify Ethiopia’s new ethnic-Sidama statehood”. borkena.com (2020年6月18日). 2020年11月6日閲覧。
  6. ^ “Sidama embarks on statehood”. The Reporter Ethiopia (2020年6月20日). 2020年11月6日閲覧。
  7. ^ AddisstandardEngの投稿(4559786817402611) - Facebook
  8. ^ “Ethiopia’s two new regional states formed : Central Ethiopia, South Ethiopia”. Borkena (2023年8月19日). 2023年9月3日閲覧。
  9. ^ “Population Size by Sex Zone and Wereda July 2023” (pdf). エチオピア統計局. 2023年9月3日閲覧。
  10. ^ “Ethiopia: administrative units, extended”. GeoHive.com. 2016年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年11月27日閲覧。
  11. ^ 独立行政法人国際協力機構 サイト内


関連項目

アフリカの第一級行政区画
北アフリカ
西アフリカ
東アフリカ
中部アフリカ
南部アフリカ
その他
海外領土
関連項目

各列内は五十音順。「その他」は国家の承認を得る国が少ない、または無い国であり、国際連合非加盟。国家承認を得た国連非加盟の国と地域の一覧独立主張のある地域一覧も参照。独立国および西サハラはアフリカ連合に加盟。